ガラガラ、コロコロ、歩くと砂浜のそれとは違う、珊瑚のつぶてが転がる軽い音が響く。視界を遮るものはなにもない。見えるのはただ広大なフィリピン海と、ありのままの島の日常だけ。
もし、作られた「南国リゾート」に少し飽きてしまったら、車を少し走らせてこの海岸に立ってみてほしい。
多田浜海岸は、いわゆる「インスタ映え」する白い砂浜のビーチではない。足元には拳大の石や珊瑚のかけらがゴロゴロと転がり、正直なところ歩きにくい。
ここは海水浴場ではない。クラゲ除けのネットもなければ、シャワーもトイレもない。観光客が水着でキャッキャとはしゃぐ場所ではなく、地元の人が買い物の帰りにふらりと車を停め、缶コーヒー片手に海を眺めて一息つく、そんな生活の延長線上にある場所だ。
南を向いているため、海に沈む夕日は拝めないし、竹富島や他の島が見えるわけでもない。ただ眼前に広がるのは、海と沖合で砕ける波。その何もない潔さが、かえって海を眺めて心を満たすのによかったりする。
この場所を味わうなら、ぜひ潮の満ち引き(タイドグラフ)も見てみると面白い。
潮が大きく引くと、沖合へ向かって100メートル以上も陸地が現れる。普段は海の底にある岩肌が露出し、取り残された小魚やカニたちが忙しなく動く様子は天然の水族館。派手なアクティビティはないが、磯遊びをしながらゆっくりと沖まで歩く時間は、何よりも贅沢な探検になる。潮が満ちればさざ波の音に心が和む。
先述の通り、ここは遊泳設備が皆無だ。見た目は穏やかでも横向きの強い流れがあったりと、近年水難事故も増えている。「泳げるかな?」という好奇心は観光で来たなら捨ててほしい。
また、ゴツゴツした珊瑚の礫はサンダルだと足を痛めやすい。お洒落なヒールや薄いビーチサンダルではなく、履き慣れたスニーカーのほうが歩きやすい。
「穴場」というと悪路を想像するかもしれないが、ここは拍子抜けするほどアクセスが良い。舗装路の突き当たりに、区画のない広大な駐車スペースが広がっているだけだ。未舗装のガタガタ道を通る必要はない。この「手軽さ」もまた、日常使いされる理由の一つだ。
市街地の利便性はそのままに手つかずの海を味わいたいなら「Seven x Seven 石垣」が一番近くてオススメ。
観光客が去った後の夜の海風や、朝一番の誰もいない海岸線の色。多田浜の荒々しくも美しい自然と、洗練されたプライベート空間を行き来する。ぜひ町と自然が隣り合わせの石垣島も味わって見てください。
最後に、現地へ向かうための実用情報をまとめておく。2026年現在も、ここは変わらず静かな場所であり続けている。
| 項目 | 詳細情報 |
|---|---|
| 住所・アクセス | 新石垣空港から車で約20分。市街地から約10分。真栄里エリアの東側。 |
| 駐車場 | あり(無料)。舗装路の終点にある広場に駐車可能。台数は多い。 |
| 設備 | トイレ、シャワー、更衣室、売店、自販機なし。 |
| 推奨滞在時間 | 30分程度(干潮時の磯遊びなら1時間〜)。 |
| 2026年の状況 | 周辺の開発は進みつつあるが、海岸自体は手つかずのまま。混雑はほぼない。 |
「泳げない海」「見えない星空」を避けるための必須知識。大潮の日の過ごし方、満潮・干潮の正しい遊び方を在住者が伝授。