色鮮やかなグラスボートが行き交う、あの賑やかな風景はここにはありません。聞こえるのは、風に揺れる木々のざわめきと、穏やかな波の音だけ。
「裏川平(うらかびら)」と呼ばれるこの場所は、島のガイドブックには載っていない場所です。鬱蒼とした緑のトンネルを抜けた先に広がるのは、潮の満ち引きだけが時計代わりになる、静謐な時間です。
裏川平には、干潮時に海の中から現れる幻の「砂の道」があります。
ただ、完全に砂が露出するのを待つ必要はありません。潮位が80cmを切る頃には、水深はくるぶしからスネ程度まで下がります。透明度の高い海水に足を浸しながら、チャプチャプと対岸の小島(無人島)へ歩いて渡る体験こそが、ここの醍醐味と言えるでしょう。
足元の砂は、高級リゾートのようなパウダー状ではありません。少しサンゴのかけらが混じった、自然そのままの感触です。特にビーチへ降りて右手側は少し泥が混じり、独特の柔らかさがあります。裸足でも歩けなくはないですが、小島に上陸して冒険気分を味わうなら、マリンシューズを一足持っておくと安心です。
時折、カヤックやSUPのツアーが通り過ぎ、一時的に賑やかになることもあります。けれど、彼らが沖へ漕ぎ出していけば、再び静寂が戻ってきます。干潮のピーク時は水深が浅すぎてボート類が入ってこられないため、完全に「歩く人」だけの特権的な景色が広がります。
この場所は、ただ行けば良い写真が撮れるわけではありません。光の読み方がすべてです。
もっとも「石垣ブルー」が輝くのは、午前9時から10時頃。
太陽が真上に昇りきる前、斜めからの光が集落方向へ向かって海を照らす時間帯です。このタイミングなら水面の反射が抑えられ、驚くほど透明な青色が浮かび上がります。
逆に夕方は、順光で海を撮るのが難しくなります。しかし、夕暮れ時は「逆光」が武器になります。西日を受けてオレンジ色に燃える川平湾の水面は、言葉を失うほどの美しさです。
アクセスには少しコツが要ります。「川平湾を望むパーキング」に車を停めたら、海へ向かって左手、牧場の草原を眺めながら真っ直ぐ進んでください。大きくターンするところで海に向かって鬱蒼としたジャングルに入っていくような道があります。未舗装路ですが、海を目指せば迷いません。
ここには更衣室もシャワーも、トイレさえありません。それが「裏」である証拠です。
砂の道を歩くのも一興ですが、少し視点を変えてみるのもおすすめです。
実は、裏川平には「手作りブランコ」が2つあります。ビーチに出て右に進んだ陸にあるものが有名ですが、実は左手、岩ぞいにそこそこ進んだころに「水上ブランコ」が存在することをご存じでしょうか。
これに辿り着くには、歩くのではなく、水面を移動する手段が必要です。
もし、潮のタイミングが合わなかったり(満潮時は砂の道は消えます)、より深くこの湾の静けさを味わいたいなら、SUP(スタンドアップパドルボード)やカヤックでのアプローチを検討してみてください。自分の足では行けないポイントから見る川平湾は、展望台からの景色とは全くの別物。まるで空と海の間を浮遊しているような感覚に陥ります。
静寂の中を漕ぎ進み、誰もいない水上ブランコに揺られる。そんな贅沢な時間を確保するには、やはり機動力のあるレンタカーで訪れ、現地の質を知り尽くしたガイドツアーに参加するのが正解です。
筆者的には満潮時にインフレータブルSUPを持参して裏川平をプライベートクルージングするのも最高にオススメしたいところです。
公共交通機関ではたどり着きにくい場所だからこそ、自分たちのペースで動ける「足」と、海の上を歩くための「翼」を手配しておきましょう。
最後に、裏川平を訪れるための現実的な情報をまとめておきます。
| 項目 | 詳細情報 |
|---|---|
| 場所 | 川平湾の対岸エリア(通称:裏川平) |
| アクセス | 市街地から車で約30〜40分。「川平湾を望むパーキング」を利用 |
| 駐車場 | あり(無料・未舗装)。台数は5.6台 |
| トイレ・設備 | なし(事前に済ませておくこと) |
| 推奨スタイル | 濡れても良い服装、マリンシューズ、タオル、着替え |
| 2026年現況 | 知名度が上がりツアー利用が増えていますが、早朝や干潮のピーク時は依然として静かです。牧場など近隣私有地への立ち入りは厳禁です。 |
※ナビ設定時は「川平湾を望むパーキング」を目印にするとスムーズです。
風も波も消えた鏡面の世界。仕事終わりにふらっと行く贅沢なSUP体験記と、海遊びに欠かせない「潮位」の話。